堅山南風《大震災実写図巻》と近代の画家

たまたま半蔵門ミュージアムのポスターを目にして今年9月1日で関東大震災が起きてから100年むかえ、現状を描いた画家がいたのだと知って堅山南風(かたやまなんぷう)《大震災実写図巻》と近年の画家を見に行ってきました。

初めて行く美術館で無料で来館できることに驚きました。先に常設展示にガンダーラの仏伝彫や鎌倉時代初期の仏師運慶作と推定される大日如来坐像や二つの両界曼荼羅(胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅)を見た後の特集展示の「大震災実写図巻」は心を揺さぶられました。「大震災実写図巻」は堅山南風が1923年9月1日の地震当日は日本美術院の展覧会初日で自宅に戻った後に地震にみまわれ、師・横山大観の安否を心配して、巣鴨の自宅から上野の大観宅まで歩いて向いその往復の間に見た惨状や被害状況、またその後の混乱や人々の生活、復興に向かうまでの当時の人々の苦悩・悲哀や助け合いの様子を順を追って上・中・下3巻・31図にまとめられたもので、自分は絵を見ていて途中復興で家が建ち屋根の上に見える月と屋根の上にいる猫の題が「寂しい月」で復興してきいるのになんだか虚無感というような感覚が襲ってきて涙がこみあげるほどでした。NHKのドキュメンタリーで白黒写真からカラーに変えたものや映像と当時の痛ましい事実を見てきたことと重ね合わせてこの絵を書き留めることは辛いことだっただろうなと思いました。でも堅山南風自身が「かかる非常の時に吾等を慰め且つ精神上の苦痛より救い玉ふは、大慈悲の観世音菩薩である」と語っていて最後は観世音菩薩の姿で絵巻がしめくくられ、観世音菩薩の絵はなにか心をほっとさせてくれる安らかな気持ちになりました。最後に堅山南風と同時代の画家の中に以前展示を見に行った竹内栖鳳の絵もあり、調べてみたら堅山南風も猫好きだったようでなんだかこれはこれで自分は心救われた気持ちになりました。今回改めて災害のことをもう一度念を押された感じがしました。防災についても考えようと思いました。会期は11月5日日曜日までやっています。半蔵門ミュージアムでは常設展示の解説上映もやっています。興味がありましたら是非。

スタイリスト山邉