歌川広重 山と海を旅する

今まで葛飾北斎から始まり動物、猫、歌川広重のおじさん図譜と描いてある人に注目した浮世絵を見てきたので、歌川広重は風景画の第一人者として、幕末に庶民の人気を得た浮世絵師だったとは今更知りました。広重が江戸の名所とともに盛んに描いたのが、諸国の山や海などの自然を題材にした作品だったそうです。

広重は若い時期から、江戸から遠く離れた東海道の名所などを題材にしていますが、特に40代頃からは甲州や房総など、さまざまな場所へ旅に出たことが知られ、旅先で自然を写した経験が以降の作品に反映されていると考えられいるとのこと。作品はもちろん歌川広重だけですが、見ていると葛飾北斎の北斎漫画から模写して広重風にアレンジして描かれている浮世絵も多く、北斎漫画から勘違いして全然違う絵にしてしまったという作品もあっておっちょこちょいというか、つくづく面白い人だなと思いました。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」は72歳に描いたとのことで発表された当時35歳の広重から見ても斬新かつ革新的で大きな衝撃を受けたようです。後に歌川広重が「東海道五拾三次」を発表し流行したことから2人は歳が離れていてもお互い意識して切磋琢磨していったようです。よくライバルで歌川広重が北斎に批判的だったと聞きますが、自分は絵からはそんなとんがった感じは受けませんでした。歌川国芳は北斎を慕って良好な関係を望んでいたと以前行った慶應義塾ミュージアム・コモンズで知りましたが、歌川広重は模写したり、波を真似て浮世絵を描くことによって北斎になんらか敬意を示してたのかなと思いました。夏ということで涼し気な広重ブルーで彩られた日本全国の名所の風景画は猛暑でまいっている心を涼しくしてくれました。会期は8月27日日曜日までやっています。興味がありましたら是非。

スタイリスト山邉