深掘り!浮世絵の見方

いつも綺麗に完成している浮世絵を見てきましたが、今回太田記念美術館では版元、彫師、摺師、絵師のサインなどに注目した作品展「深掘り!浮世絵の見方」が開催されていているので行ってきました。

去年の10月浮世絵版画体験をしましたが、浮世絵は一つの絵を完成させるのにいくつか木版があり、一つ一つ色をわけて摺っていきます。色の量具合も気にしつつ、ピタっと木版を合わせないとズレてとんでもないことになります。浮世絵は絵師たちに注目されがちですが、版元(現代でいう出版社)のプロデュース、彫師と、摺師の技術のコンビネーションにより素晴らしいものになります。今回彫師の凄さで感動した作品は歌川国貞(三代豊国)の「東海道五十三次之内 白須賀 猫塚」歌舞伎役者を描いた浮世絵ですが、化け猫の毛のミリ単位で掘られた部分が素晴らしく、小泉巳之吉という彫師で18歳若い時からこの毛割で才能を開花させたようです。ほかに蚊帳で寝る母子の浮世絵は蚊帳の網目の細かさ、立体感が出るよう網目の形を工夫して描かれていました。文字までも鏡文字で彫られていて彫師のテクニックに舌を巻きました。浮世絵の多くは木版画で出来ていて、同じ作品がたくさん存在しています。摺りの早いものと遅いものとを比べてみると、色や形など、同じ作品でも細かいところにさまざまな違いが出て来ます。素晴らしい摺師のテクニックですが、時には浮世絵の中色の配置を間違え何度も摺ったことで木版が摩耗し直したときにはグラデーションがなくなってしまったりと摺師のうっかりがまったく違う作品になっていて面白かったです。あと浮世絵には版元、絵師、彫師のサインがあるのですが、絵師と版元のトラブルによりサインが消えていたり、元の絵に文字や人が足され違う作品になったり、政府が販売できるかどうか検閲した際のサインも入っていることには驚きました。贅沢禁止の制度があった時代、政府に対しての不満を表した浮世絵は版元も絵師もわからないものがあったことを思い出しました。前回葛飾北斎の娘、応為の作品を見に行って他にも歌川国芳の娘も絵師になったと知ったのですが、今回父親の絵の中にコマ絵として作品が入っていて歌川芳鳥(よしとり)「とり女画」とサインがある貴重な作品を見ることができました。歌川一派では「年玉印」というサインが流行っていたようですが、広重はよく好んで絵の中に「ヒロ印」という印を入れていたようです。カタカナの「ヒ」を囲む四角を「ロ」に見立てた模様でした。江戸っ子のちゃめっけはいつ見ても面白いなと思いました。今回いつもと違う浮世絵をみることができて本当に良かったです。会期は12月24日日曜日まで。今回は短期間での展示だそうです。興味がありましたら是非。

スタイリスト山邉